Vespera Proに新たに搭載された「自動イメージキャリブレーション機能」

新しい「自動イメージキャリブレーション機能」により、Vespera Proユーザーはよりシャープでディテールに富む画像を簡単に撮影できるようになりました。デジタルノイズを効果的に低減し、撮影プロセスをシンプルに保ちながら、観測のクオリティを最適なものにします。

※Vespera Proの「自動イメージキャリブレーション機能」は、SingularityアプリおよびVespera Proのファームウェアが最新のものになっていることが必要です。Singularityアプリを最新 のもの(iOS: 1.32.1以降、Android: 1.32.4以降)にアップデートしたうえでVespera ProにWi-Fi接続し、Vespera Pro本体にファームウェアV.2.32以降を適用してください。

イメージキャリブレーションの役割とは?
銀河や星雲を撮影するには、高感度センサーと長時間の露光が必要です。このプロセスでは、天体からの光(「信号」)を記録するだけでなく、センサーの電子回路に起因する不要な「ノイズ」も発生します。ノイズには、実際の信号とは関係なく発生し続けるホットピクセルのようなアーチファクトが含まれています。
Vaonisのスマート望遠鏡は、自動的にスタッキング技術を使用してノイズを低減し、高品質の画像を生成します。しかし、スタッキング前に個々のフレームのキャリブレーションを行うことで、さらに鮮明な画像を得ることができます。
完全な暗闇(レンズを覆った状態)で画像を撮影することで、キャリブレーション画像、すなわちダークフレームが作成されます。このダークフレームによってセンサーの問題箇所がマッピングされ、撮影した画像からこれらの問題を差し引くことができます。

自動キャリブレーションなし(上)とあり(下)の20分間のキャプチャ。自動キャリブレーションにより、ノイズレベルが減少し、ディテールがより明確になっています。

自動キャリブレーションのしくみ
センサーから発生するノイズは、露光時間、ゲイン、周囲の温度に依存します。従来は、観測と似た条件下でキャリブレーション画像を撮影する必要があり、不便な場合がありました。
Vaonisは「ユニバーサルマスターダーク」という革新的な技術を開発することで、このプロセスを合理化しました。このキャリブレーションモデルはすべての観測条件で適用可能であり、オフセットまたはバイアスデータも組み込むことができます。一度作成したユニバーサルマスターダークはすべての観測に使用することができ、観測セッションごとに新しいキャリブレーション画像を頻繁に取得する必要はありません。

ユニバーサル・マスター・ダークの生成方法

ユニバーサルマスターダークを作成する手順:

  • Vespera Proの電源を入れ、Wi-Fiでスマートフォンまたはタブレットに接続します。
  • Singularityアプリを開き、Vespera Proが検出されたことを確認します。 
  • 付属のレンズキャップを望遠鏡のレンズ先端部に装着し、アームを閉じます(収納します)。Vespera Proの初期化作業を行う必要はありません。
  • アプリの「本機」をタップし、設定画面にアクセスします。
  • 「キャリブレーションフレーム」をタップし、画面の指示に従います。
  • キャプチャー中に操作を中断した場合は、最初からやり直す必要があります。

所要時間と頻度:

  • ユニバーサルマスターダークの作成には約30分かかります。
  • このマスターダークファイルは1度作成すれば当面再作成の必要はありませんが、おおむね12カ月ごとに再作成されることを推奨します。

最適な条件:
この作業は周囲の温度が暖かい環境(20~25℃)で行い、付属のレンズキャップを使用してセンサーに全く光が入らないようにして実施します。この作業は、日中の屋内で簡単に行うことができます。

 

自動画像キャリブレーションを有効にする方法
ユニバーサルマスターダークを生成したら:

  • 「本機」の設定画面に入ります(Vespera Proの画像が書かれたエリアの「>」をタップ)。 
  • 「設定」をタップします。
  • 「マスターダークを使用する」オプションのスイッチアイコンをタップして有効にします。
  • 通常通り観測を開始します。

注:自動キャリブレーションで取得されたマスターダークデータは、スタッキングを伴う観測(銀河、星雲など)にのみ適用されます。月や太陽などのライブ観測には使用されません。 

Q&A : 自動キャリブレーションとマスターダーク

自動キャリブレーションはすべての観測条件で機能しますか?
ユニバーサルマスターダークは、露光時間1~25秒、ゲインレベル1~27dB、温度に関係なく、スタッキングを含むあらゆる観測に適用されます。 

観測中に自動キャリブレーションが有効であることを確認するにはどうすればよいですか?
自動キャリブレーションが有効になっている場合、観測画面の上部に特定のアイコンが表示されます。 

自動キャリブレーションによるユニバーサルマスターダークの使用と、エキスパートモードでのダーク取得の違いは何ですか?
エキスパートモードでキャプチャしたダークデータは、観測後に手動でスタックするために使用されるものです。これらのダークは進行中の観測には影響しません。 

自動キャリブレーションはSingularityアプリによるJPEG画像出力に影響しますか?
はい。 

自動キャリブレーションはVespera Proが記録した個々のFITS画像に影響を与えますか? 
いいえ。FITS画像は手動で取得したダークデータを使って、手動でスタックするためのものであるため、FITS画像そのものに変更はありません。 

自動キャリブレーションは、手動での後処理用の16ビットTIF画像に影響を与えますか? 
はい。手動での画像処理用のTIFファイルは、自動キャリブレーションされた画像から生成されます(観測前にこの機能が有効になっていた場合)。 

Universal Master Darkを天体写真ソフトウェアで使用して、手動スタッキングできますか? 
いいえ。Universal Master DarkはVaonisが開発した特定のアルゴリズムを使用しており、天体写真ソフトウェアには実装されていません。手動スタッキングには、エキスパートモードを使用して、ダークデータをキャプチャしてください。 

自動キャリブレーションはモザイクをキャプチャするときに適用されますか? 
はい。キャプチャを開始する前に、この機能が有効になっていることを確認してください。 

「夜のプランを立てる」機能を使用した観測にも自動キャリブレーションは適用されますか? 
はい、プラン起動時に機能が有効になっている限り、適用されます。 

観測中に自動キャリブレーションを有効または無効にするとどうなりますか? 
観測開始時に定義した設定が適用されます。自動キャリブレーションを有効にし忘れた場合は、観測を再開して有効にする必要があります。 

自動キャリブレーションは、マルチナイト観測にどのように影響しますか? 
自動キャリブレーションが有効な状態でマルチナイト観測を開始した場合、Singularityアプリ上の設定に関わらず、観測を再開しても自動キャリブレーションは有効なままです。逆に、観測開始時に自動キャリブレーションを無効にした場合は、観測再開時も無効のままです。

自動キャリブレーションは観測中の画像取得スピードに影響しますか?
ありません。 

自動キャリブレーションは画像のファイルサイズに影響しますか? 
ありません。

カバー画像:自動画像キャリブレーションを使用してVespera Proで撮影したハート星雲。2時間のデータ取得。後処理画像。